特許費用は、特許庁に納める一定の手数料のほか、弁理士報酬もかかるために、開発者には高額な負担がかかってしまいます。研究開発に多くの資金をかけられる大企業であるならばよいですが、中小ベンチャー企業にとって特許費用は重くのしかかります。
そこで、助成金や補助金制度等の活用ができないか検討することも1つの方法です。ここでは、特許費用を抑える助成金や補助金制度等について詳しく説明しています。
特許庁は、一定の要件をみたした中小企業や小規模事業者の審査請求料と特許料(1~10年)を減免する制度を設けています。一定の要件は、従業員数や資本金の額などで決まります。
中小ベンチャ―企業や小規模事業者を対象とした減免措置では、設立から10年未満であることと大企業に支配されていないことの要件で、大体の企業が審査請求料と特許料を1/3に減らすことが可能です。
2019年以降に審査請求した案件から減免申請書の提出が不要で、手数料に関する特記事項を記載するだけで減免制度の申請が可能となりました。また、減免に関する証明書類の提出も不要です。
特許庁は、国際出願に関しても中小企業や小規模事業者の手数料の軽減制度と交付金制度を設けています。軽減制度は、日本語の国際出願に係る送付手数料、調査手数料、予備審査手数料を、要件をみたす場合に1/3から1/2に軽減するものです。
設立から10年未満で、大企業に支配されていない中小ベンチャー企業や小規模事業者を対象としたものでは、出願時の送付手数料・調査手数料、予備審査請求時の予備審査手数料を1/3に軽減します。また、国際出願を促進するために交付金を設け、要件をみたす中小ベンチャー企業や小規模事業者に対して、国際出願料と取扱手数料の2/3に相当する額を交付します。
東京都では、都内の中小企業者等に外国特許出願から中間手続きにかかる費用の1/2以内、最大400万円を助成する外国出願助成金制度を設けています。
この助成金制度では、外国出願手数料だけでなく、代理人費用、翻訳料、先行技術調査料、国際調査手数料等も助成対象であるために、弁理士報酬等も助成金の対象です。申請書類を受け付け期間内に提出することが必要であるために、助成金を活用することを考えるならば、外国出願を計画的に行うことが必要です。
経済産業省はJETROと都道府県等の中小企業支援センターを窓口に、日本国内の中小企業等の外国出願に係る費用を助成する制度を設けています。
助成金の額は、1中小企業者に対して300万円以内、助成対象経費の1/2以内です。経済産業省が運営するjGrantsからも申請できるようになっています。
外国特許庁の出願費用だけでなく、代理人費用や翻訳料も助成対象です。都道府県の中小企業支援センターが窓口であるために、活用を考えるならば、相談するとよいでしょう。
東京都内の中小企業者等が、開発戦略を目的として他社調査を依頼したとき、対象経費の1/2以内、最大100万円が助成されます。開発戦略策定や特許出願戦略策定に係るパテントマップ作成費用や出願動向分析費用などが対象経費に含まれます。受付期間の定めがなく、予算額に達した時に締め切られる制度であるため、東京都知的財産総合センターに申請状況を確かめてから活用するとよいでしょう。
経済産業省の補助金で、知的財産関連の経費も補助対象としている制度に、ものづくり補助金、JAPANブランド補助金の制度があります。
ものづくり補助金は、機械装置の導入費の補助が主な目的なため、その補助事業計画に知的財産関係経費を絡めるように計画するとよいでしょう。JAPANブランド補助金は、日本製品の海外展開を主な目的としているため、海外展開の計画と知的財産関係費を絡めるように計画することが必要です。
いずれの補助金も年度によって採択率が異なりますが、採択率30~40%が一般的です。採択率アップのために、経営革新計画、事業継続力強化計画の事前計画承認を受けるとよいでしょう。
特許庁の審査は時間がかかることが一般的です。申請者が早期に技術の権利化をできるようになるために「スーパー早期審査制度」を設けています。
実施関連出願かつ外国関連出願、または、ベンチャー企業による実施関連出願で、オンライン手続きで行うことが要件です。通常1年以上かかる審査を、2~3カ月に短縮するために、特許の早期取得が可能です。
助成金や補助金等の制度を活用することで、特許に係る費用を抑えることが可能です。
様々な助成金・補助金等の制度が設けられていますが、申請手続きを見越して計画的に活用することが大切。採択は申請書類の出来に左右されることもあるため、制度に精通し、実績ある弁理士に相談するとよいでしょう。
所長弁理士 坂本智弘
所属
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