特許の保護対象である発明は、「物の発明」「物を生産する方法の発明」「物の生産を伴わない方法の発明」の3種類に分類されます。特許法では、コンピュータプログラムを「物の発明」として保護しています。ここでは、IT分野の特許について詳しく説明しています。
アプリの発明について考えてみましょう。アプリは「物」に分類されるのでしょうか?
特許法はアプリなどのソフトウェアを「物の発明」として保護しています。ソフトウェアの発明は、従来にない情報処理の方法や出力の方法によって、ハードウェアに従来にない便益を持たせた場合、特許性が認められます。逆にいえば、人間が行う処理をアプリが行うようにしただけの場合は進歩性がないために、特許要件はみたしません。
ビジネスモデル特許という言葉がありますが、ビジネスの方法を「方法の発明」として特許法の保護を受けることはできるのでしょうか?ビジネスモデルは発明要件の「自然法則を利用した技術的思想」に該当せず、特許法の保護を受けることができません。それでは、IT分野でビジネスモデルの保護を受けることはできないのでしょうか?
IT分野は、ビジネスモデルにIT技術が密接に関係しています。そこで、ビジネスモデルを実施するためのシステムやプログラムを「物の発明」、コンピュータの処理を「方法の発明」として、特許出願されています。
特許権の効力は国ごとに及びますが、IT技術がグローバルに浸透する傾向があります。この状況では、ソフトウェアの特許侵害が国境を越えて行われるために、国ごとに特許を保護することが困難です。そこで、米国で起こった国境を越えた特許侵害に対して、特許権の国外適用が検討されました。日本においても国境を越えたソフトウェア発明の保護を検討されています。
米国では、BlackBerry事件で、特許発明の構成要件の一部が米国外にあるとしても、直接侵害として米国特許法271条が適用される判例が出ました。国境を越えたソフトウェア開発にまで米国では特許法が適用されています。
アプリの発明は「物の発明」に該当し、特許として保護されます。ビジネスモデルもIT技術と関連が密接であれば、ソフトウェアの「物の発明」やコンピュータ処理の「方法の発明」として特許取得ができる可能性があります。IT技術は国境を越えて進展するために、国外の特許侵害にどのように対応するかが課題です。このように、IT分野の特許は新しいもので、ルール作りも時代とともに進んでいきます。
所長弁理士 坂本智弘
所属
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