発明など知的財産を保護する法は、特許権以外に実用新案権も存在します。それぞれの保護対象は何を指すのか、両者の違いはどこにあるのか、わかりやすく説明します。
特許とは、そもそも発明を保護するために作られた制度です。
仮に研究者が長年かけて何らかの発明をしたとしましょう。しかし、その発明を発表したとたん、ほかの人たちがこぞってまねをしては、研究者の利益が奪われてしまいます。これでは、発明をする意欲が低下し、研究者が損をするばかりです。
このような事態を防ぐため、特許法では、発明をした人が一定期間に限り技術を独占できるよう、特許権を与えて保護しています。
特許法上、保護対象となるのは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」と定義された発明です。
「自然法則」とは、自然界で体験により見出された科学的な法則のこと。人間が作り出した金融や税金などの取り決め、計算や暗号は自然法則を利用したものではないので保護の対象とはなりません。と同時に、発明は高度なものであり、技術水準が低ければ保護対象とはなりません。
「技術的思想」とは、技術に関するアイデアや概念を指します。ただし、この場合の「技術」は第三者に伝達できる内容でなければなりません。
練習によってスポーツ選手が身につけた技術や、絵や彫刻を上手に作り出す技術などは発明の保護対象ではありません。
小説やアニメ・ドラマなどの「創作」はフィクションを始め新しいものを作り出すことですが、「発明」による技術的創作とは異なっているため保護対象ではありません。
特許で保護される発明は、自然法則を利用した上で高度でなければならないと定義されています。「高度」とは、これまでにない新しい機能であったり、優れた効果が見られるものなどを意味します。
特許権と実用新案権は、どちらも新しい技術のアイデアなど、発明に対して付与される知的財産権です。にも関わらず、特許法と実用新案法とで内容が異なるのは、両者の保護対象に違いがあるためです。
特許法が保護する発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」と定義されています。
対して実用新案法では、「自然法則を利用した技術的思想の創作であり、なおかつ物品の形状、構造または組み合わせにかかるもの」となっているのです。
つまり、物品の形状や構造、組み合わせなどへのアイデアが保護対象であり、必ずしも技術が「高度なもの」でなくてもいいわけです。
また、特許は出願から20年間、権利が保護されますが、実用新案ではその期間が半分の10年間となっています。
手続きも、実用新案は出願するだけで権利が認められる場合が多く、特許のように審査されることはありません。
特許権の保護対象や実用新案権との違いはおわかりいただけたでしょうか。特許は特に、実用新案とは異なり申請手続きが煩雑です。否認される場合もあり、手間と時間のかかるケースがほとんど。発明者の負担を軽くするためにも、弁理士などの専門家に申請手続きを依頼すると良いでしょう。
所長弁理士 坂本智弘
所属
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