知的財産権である特許権と商標権の大きな違いはその保護対象にあります。知的財産権ではそれぞれ保護対象が決められており、目的に合わせた権利の保護を行うことで、権利者の利益を守ってくれます。ここではその違いをさらに掘り下げ、解説していきます。
特許権の保護対象は発明となっており、その発明の定義は「自然法則を利用した技術的思想のうち高度のもの」であり、簡単にいうと「役に立つアイデア」と表現することができます。そのため金融保険制度・課税方法といった人為的な取り決めや計算方法、プログラミング言語、暗号などといった自然法則の利用がないものは保護対象となりません。また、例えばニュートンの万有引力の法則の発見のように「発見そのもの」は技術的思想の創作にあたらないため保護対象とはなりません。
商標権の保護対象は「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」となっており、その種類はさまざまです。今までは文字や図形、立体的な形状などに限られていましたが、平成26年5月14日交付の法律第36号により商標の定義が見直され、「動き」「ホログラム」「音」「位置」「色彩」なども保護対象として認められることとなりました。
特許権の存続期間は出願から20年であるのに対し、商標権は10年毎に更新ができる制度になっているため更新登録料を支払うことで永続的に権利を保護できます。特許権は技術の発展という目的のため、出願から1年6か月で公開され出願から20年後には維持が不可能になります。
特許権は出願から取得まで70万円以上の費用がかかるといわれていますが、自治体の補助金や国の制度を利用することで半分程度は抑えることができます。一方で商標の手続きは更新時に更新料はかかるものの、出願から取得までは20万円程度で済みます。
特許権の侵害は発明の要件すべてを使用して初めて認められます。これに対して、商標権では「紛らわしい名称を使用した」というレベルの行為であっても侵害と認められることがあります。ただし保護される範囲がありますので、その点は注意が必要です。
知的財産権の保護は権利者の利益を侵害されないために行いますが、特許などの申請手続きは煩雑です。否認される場合もありますし、特許で保護できなくとも他の知財で保護できる可能性もあります。そのため、弁理士などの専門家に相談のうえ進めるようにしましょう。
所長弁理士 坂本智弘
所属
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