実は特許は中身を分割して申請することができます。このページでは「特許出願の分割」について紹介していきますので、その特徴やメリット、流れなどについて見ていきましょう。
特許庁に出願している特許出願を、後から2つ以上の出願に分割することを「特許出願の分割」と呼びます。例えば1度に複数の発明に関する特許出願を行い、そのうちひとつが特許要件を満たさない場合でも、特許の分割を行うことによって、要件を満たす部分について先に特許権を得られるように進められる、というメリットがあります。また、分割した出願をさらに分割することも可能です。
この時にもともと出願していた特許出願は「現出願(親出願)」、親出願を分割した特許出願は「分割出願(子出願)」、子出願をさらに分割した特許出願は「分割出願(孫出願)」と呼ばれます。
分割出願は下記の期日内で行う必要があります。また、特許出願の分割は、その特許出願の出願人が行えます。
特許の分割出願を行う場合には、上記で説明した「期日」と「出願を行う人物」の2つの要件を満たした上で、さらに下記で説明する「実体的要件」を満たす必要があります。
特許の分割出願においては、「分割出願は原出願に包含されている」という点が前提となっています。このことから、原出願に含まれない、新しい発明などが分割出願に含まれている場合には、出願を行えない点に注意が必要となります。
特許出願の分割を行うと、「原出願の出願順位を維持できる」という点は大きなメリットです。
特許法では「先願主義」が採用されており、同一の発明に関する特許出願が複数あった場合には、一番早く出願されたものに対してのみ特許権が与えられます。このことから、同じ発明に関する特許権を得ようとしている競合他社に対しても、早いタイミングで特許出願を行う方が有利なのです。
この「先願主義」は特許出願の分割を行った場合にも引き継がれます。そのため、特許出願の分割が行われた場合にも、分割出願の出願日は原出願が出願された時点とみなされます。
特許について知る上では、「新規性」と「進歩性」という2つの要素が重要になってきます。新規性とは、「すでに世間から知られている発明と同じものではないこと(特許法29条1項)」、進歩性とは「すでに世間に知られている発明から、容易に考えつくものではないこと(特許法29条2項)」ということを表しています。
特許の出願を行うと、出願日から1年6ヶ月経過した時点で公開が行われます(出願公開)。こうなると、出願内容は広く知られることになるため、新規性や進歩性を満たせなくなる可能性が高いといえるでしょう。
この状態で、原出願に関係がある発明の一部のみを再度特許出願をしようとすると、原出願が公開されていることで再出願したものが新規性や進歩性を満たせずに特許権が認められない、ということになります。
対して、特許出願の分割を行った場合には、新規性と進歩性の判断の基準時は原出願の出願時となります。すなわち、原出願を出願する時点で新規性・進歩性を満たしていれば、原出願が公開された後に特許出願の分割を行ったとしても、分割出願について新規性・進歩性が認められます。
複数の発明をひとつにまとめて特許出願を行う場合には、「発明の単一性(複数の発明間で技術的な関連や共通性があること)」の要件を満たす必要があります。
もし、この要件を満たせない場合にはそのままでは特許が認められないため、特許出願の分割を行うことによって要件を満たすように変更できます。そして発明の単一性の要件を満たしていると認められた場合には、原出願の出願順位を維持したまま審査を受けられます。
複数の発明について一緒に出願を行う場合、一部だけが特許権が認められるというケースもあります。このような場合には、特許出願の分割を行うことによって出願順位を維持しながら、一部は早いタイミングで特許の取得を行うことが可能。さらに、認められなかったものについては、拒絶理由の修正などを行うことも可能です。
例えば、早期に権利化を行いたいなどの理由で限定して特許出願を行うケースもあります。このように、範囲を限定して特許査定が行われたもののさらに広い範囲で権利化を行いたい、という希望がある場合には、特許出願の分割の際に拡大して出願する、という方法を取ることができます。
こちらでは、分割出願の流れについて紹介します。
特許出願の分割を行う場合には、まず特許庁に対して特許出願の分割を申し立てます。この場合、原出願とは異なる出願として扱われることから「特許願い」「明細書」「特許請求の範囲」「図面」「要約書」といった特許出願に関する書類を提出し直すことになります。
さらに、特許出願の分割にかかる上申書の提出を行い、原出願からの変更箇所や、分割出願が分割の実質的要件を満たしていることなどについて説明をする必要があります。
特許出願の形式的要件が満たされているかを確認し、現出願と分割出願の包含関係に関する実体的要件の審査が行われます。ここでは、原出願にはない新規の事項が含まれていないかといった点について審査します。
この段階で実体的要件が満たされていないと判断された場合には、まずは出願人に対し理由を説明した上で補正の機会が与えられます。補正の結果、実体的要件が満たされたと判断された場合には、特許出願の分割が認められます。
もし特許要件を満たしていないなど拒絶理由があると判断された場合には、出願人に対して拒絶理由が通知され、補正の機会が与えられます。
出願された内容が要件を満たし、拒絶理由がない場合には、審査官は特許をすべき旨の査定を行います。また、拒絶理由がある場合には、特許出願を拒絶すべき旨の査定を行うことになります。
特許出願人に対しては、査定結果・理由が記載された査定謄本が送付されます。されに、特許をすべき旨の査定が行われた場合、特許権の設定登録が行われて特許権が与えられます。その後、特許出願の日から20年で特許権は消滅します。
こちらのページでは、特許出願の分割について説明してきました。特許申請の手続きは非常に煩雑であることから否認されてしまうこともあります。そこで、出願の際には弁理士などの専門家に依頼することがおすすめです。
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所長弁理士 坂本智弘
所属
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