開発した発明を特許出願すると、1年半後には一般的に公開されます。公開されると、競合他社に模倣されるおそれが発生し、その補償として補償金請求権も発生します。
こうした特許制度を考えて、知財実務上のオープン&クローズと事業戦略上のオープン&クローズを判断します。ここでは、知財実務上のオープン&クローズと事業戦略上のオープン&クローズについて理解を深めましょう。
特許制度では、出願から1年半経過すると、特許出願情報が特許広報に記載され、一般に公開されます。公開されると他人の模倣のリスクが発生します。第三者が業としてその技術を実施したときは、その第三者に対して補償金請求権を請求することが可能になります。
また、補償金請求を早期に得るために、特許出願者は出願公開請求を行うことも可能です。このように、特許出願は、第三者による模倣のおそれと第三者に対する補償金請求を考えて、戦略を立てることが必要です。
企業が保有する知財の特許取得をするか否かの判断をどうするか決めることをいいます。オープン化とは特許出願して権利化することをいい、クローズ化とはあえて特許出願せずノウハウとして社内に隠すことをいいます。
特許出願して公開・権利化するオープン化戦略のメリットは、知的財産法の保護を受け、権利活用できるために、ライセンス料、パテントプール、ロイヤリティ等の収益を得ることができます。
オープン化戦略のデメリットは、特許出願の1年半後には公開されるために、他社に模倣されることや他社が周辺特許を取得する可能性が発生します。
特許出願せずに営業秘密として社内で管理するクローズ化戦略のメリットは、自社の研究開発の方向性を競合他社に秘匿することが可能で、特許になじまないノウハウも公開されずに社内で管理することが可能です。
特許の有無とは別に、自社が保有する経営資源を第三者の使用を許諾するか否かの判断を決めることをいいます。
オープン化とは第三者に自社経営資源の使用を許諾して、市場規模拡大を目的として協調すること。クローズ化とは自社経営資源を独占し、市場シェア率を上げることを目的として競争することをいいます。
事業戦略上のオープン戦略の目的は、技術や商品を普及させるために公開し、他社の営業活動も利用して、市場そのものの規模の拡大を目指すことです。このとき、特許をライセンスとするときはライセンス料も発生します。
事業戦略上のクローズ戦略の目的は、開発した最新技術と研究の方向性を秘匿化して、市場シェアの向上を目指します。技術やノウハウの独占による差別化による競争力の強化で市場独占に貢献します。
自社が開発した技術をどこまでオープンにするかを、事業戦略上、知的財産戦略上決めていくことが必要です。特許分野の市場動向や自社の経営戦略などの視点から、オープン・クローズを決めていきます。
このとき、発明や技術に精通し、特許戦略に精通した弁理士は、最適なアドバイスをしてくれます。自社の発明・技術と外部の市場動向を適切に分析した特許戦略を決めることが、長期的な企業の発展に貢献するといえます。
所長弁理士 坂本智弘
所属
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