特許権は持っているだけでキャッシュフローを生み出す資産ではありません。そして特許権は自社内での活用以外にも有効活用できる方法が存在します。ここでは特許権の「有効活用方法のうち、ライセンスによる収益化を解説します。
特許のライセンス契約とは、特許権者が第三者に対して特許発明の実施を許諾する契約のことをいいます。特許権は特許発明を独占的に実施できる権利のため、特許権者以外が特許発明を行うことは通常できません。一方、ライセンス契約を締結することによりライセンシーとなった企業は対象の特許発明を実施することができるようになります。
ライセンス契約を締結するということはライセンシーが特許発明を実施することをライセンサーが許諾することを意味しますが、もちろん好き勝手自由に実施できるというものではありません。一般的には有償ライセンスという形がとられますので、ライセンシーは一定の実施料をライセンサーに支払うこととなります。その際、どのような基準でいくらの実施料を支払うのか、またそれをいつ支払うのかといった支払いに関する内容は決めておく必要があるでしょう。お金が絡む話なので、ここを曖昧にしていると後々トラブルとなり、最悪の場合は訴訟に発展するリスクすらあります。
支払いの他に決めておかなければいけないのが、付与するライセンスの範囲です。具体的には通常実施権なのか専用実施権なのかという実施権の種類や、契約期間や実施できる地域・行為の態様などといった実施権の範囲です。こちらについてもしっかりと定めておかなければ、後々のトラブルリスクとなり得るでしょう。
特許権における通常実施権とは、特許発明を実施できる権利をさします。通常実施権は特許法第78条に定められていますが、これは当事者間の合意があれば設定することができます。ただし通常実施権者はあくまでも「自身が発明を実施できる権利」を持っているだけですので、原則として特許権者は複数の者に対して通常実施権を許諾することが可能です。また、通常実施権者は特許発明を実施している第三者に対する損害訴訟を自ら提起することは認められません。
特許権における専用実施権は、ライセンシーだけが特許発明を実施することができる権利となっています。これは特許法第77条に定められていますが、専用実施権は原簿への登録を行わなければ設定することができません。また、専用実施権を設定した場合には設定行為で定めた範囲内において、特許権者でさえも特許発明が実施できないという独占度の強いライセンスとなっています。また、一度専有実施権を設定すると、その範囲においては第三者に対してさらに実施権を与えることができなくなってしまいます。
特許権の活用としてライセンス契約は非常に有効ですが、「通常実施権」と「専用実施権」のどちらを付与するのかによって大きく内容が変わります。自社の保有する無形固定資産の価値をしっかりと活用するためにも、しっかりとした知財戦略を練ることが必要になります。非常に専門性が高い問題になりますので、悩まれる方については知財戦略のプロである事務所に相談されることをおすすめします。
所長弁理士 坂本智弘
所属
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