多くの技術が特許として認められると、複数の特許権ライセンスを使用する際にそれぞれ契約が必要となります。この煩雑な作業を合理的にするのが、パテントプールです。
パテントプールは「パテント(特許)のプール(貯水池)」という意味で、1つもしくはそれ以上の特許を複数者の個人や企業で使用できるようにする仕組みとなります。
また、パテントプールの定義は日本とアメリカで異なっています。
日本 | 特許等の複数の権利者が、それぞれの所有する特許等 又は特許等のライセンスをする権利を一定の企業体や 組織体(その組織の形態には様々なものがあり得る。) に集中し、 当該企業体や組織体を通じてパテントプールの構成員等が 必要なライセンスを受けるものをいう |
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アメリカ | 2またはそれ以上の特許保有者間における、 1またはそれ以上の特許を相互にまたは第三者に対して ライセンスする合意 |
日本は特許のライセンスについて特定の企業や組織に集中させるようにしている傾向にあり、米国は基本的な構造が広く網羅されていると言えます。
特許になるような技術を利用したい企業(ライセンシ―企業)が多い場合、特許を取得している会社(ライセンサー企業)は各企業に対して個別にライセンス使用についての交渉や契約などの手続きを行わなければいけません。
しかし、パテントプールでは条件交渉や契約手続きについてパテントプール組織(ライセンス会社)が行ってくれるため、ライセンス関連業務を簡素化できるメリットが期待できます。
ライセンス交渉にまつわる紛争としては、以下のものが挙げられます。
パテントプールでは、含まれている特許権は有効のものとしており、対象技術に必要不可欠であるものが選定される合理的な物としてライセンスされています。
一括してライセンスを受けた方が合理性が良くなることで、結果的にライセンス交渉に関する紛争を避けることができるのです。
パテントプールが形成されると技術を使用する企業が増えます。結果的に、市場拡大に繋がり、ライセンサー企業としてはライセンス収入の増加、ライセンスを使用するライセンシー企業は売り上げ増加がメリットとして期待できるのです。
特許を保有している企業とそれぞれ交渉しライセンス契約を結ぶと、それだけで高額なライセンス料・ロイヤリティが発生します。
パテントプールは支払う金額について合理的な範囲に抑えられるため、ライセンスを使用する側にとってコストを抑えられるメリットがあります。
パテントプールを形成すると市場が拡大する一方で技術の独占ができなくなるデメリットがあります。
どこまでパテントプールに提供するのか、特許権により独占するのかを考えることが大切です。
パテントプールはライセンスを使用する側にとってコストを抑えられるメリットがある一方で、ライセンスを持つライセンサー企業が個別に交渉・契約する際と比較して得られるロイヤリティが少なくなるデメリットがあります。
技術革新が大きい情報通信分野などにっついては、関連する事業者が規格を策定・広く普及を進めることで新製品の市場を立ち上げる、需要を拡大することが行われます。これが、標準化活動です。
標準化活動では、複雑な権利関係を処理しなければならず、それぞれの交渉が大きな負担となります。この問題を解決するのが、パテントプールです。
特許権の所有者が共同でパテントプールを形成し、これを通じて製品の開発や生産に必要な特許を一括して管理することにより問題の解決が図れるのです。
パテントプールの運用をスムーズに行う為、参加者に一定のルールを課します。合理的な必要なものであれば活動自体が独占禁止法に触れるわけではありません。
ただし、以下のようなことを起こせば問題になる恐れがあります。
独占禁止法上問題になるかどうかについては、事案ごとに判断することになります。
パテントプールを形成するためには、2つのアプローチがあります。
自社の特許が既存のパテントプールと合致するのであれば、パテントプールを運営している民間企業にアプローチすることができます。
MPEG-2など映像フォーマット等の標準規格について、約1,500社へのライセンス契約を結んでいるパテントプールの代表です。
欧州を拠点とする知的財産権を管理している会社であるSisvelでは、通信、音声、映像フォーマット等の特許に関する管理運営を行っています。
LTE必須特許を2つの共同特許ライセンスとして統合しているLTEパテントプールを提供しています。
所長弁理士 坂本智弘
所属
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